
お役立ち記事
カスタマーサクセスがうまくいかないのは、担当者が優秀でないからではない。
優秀な人だけでは回らない、極めて高度なプロジェクトマネジメントだからである。
成果が出ないと、優秀な人を採用し、顧客との接点を増やす。それでも現場が疲弊していくなら、まず人ではなく、仕組みを見直してほしい。
難しさは、1社の中でも次々に重なっていく
ある顧客の契約が決まり、導入の目的をヒアリングし、オンボーディングを進め、利用も順調に立ち上がった。定例では推進担当者と、次の活用まで話せていた。
半年後、その推進担当者が異動する。後任の方は導入の目的を知らない。同じ時期に、顧客の事業方針も変わる。利用ログはまだ順調に見えるが、決裁者は費用対効果に疑問を持ち始めている。そして更新の時期に、解約の相談が届く。
しかもCSの担当者は、こうした顧客を同時に何十社も抱えています。顧客ごとに、置かれている状況が違います。
このとき、担当者は失敗していたわけではありません。目的を聞き、立ち上げを支援し、定例も欠かさず続けていました。
ずれていたのは、この難しさへの「向き合い方」です。難しい仕事を、担当者の記憶と頑張りだけで支えていました。
なぜなら顧客の側でも、組織も事業も変わり続けているからです。変化を前提にした支援がないと、後任の担当者や決裁者に、これまでの成果が引き継がれません。成果が見えないものにお金を払い続けるのは不安です。だから更新のタイミングで、解約を選ぶ可能性がぐっと上がります。
カスタマーサクセスが難しい3つの構造的な理由
顧客ライフサイクルマネジメント2.0では、CSが難しい理由を3つの構造的な理由があります。
「仕組み」がないとなぜカスタマーサクセスは破綻するのか?
改めてカスタマーサクセスが持つ構造的な難しさを解説します。
① お金をかけても伸びない構造
まずは投資と成果の関係です。マーケティングは広告費、営業は商談数を増やせば、一定、成果が比例して積み上がりやすい構造です。一方でカスタマーサクセスの成長のレバーは「支援の質×再現性の仕組み」です。カスタマーサクセスの成果は「人の数」ではなく「仕組みの質」で決まります。
人やリソースを無闇に投下すると品質の悪い対応になってしまい、最悪の場合、信頼を落としてしまい解約を招くこともありえます。人やリソースを投下する前に、支援の質や再現性を高めておくことが重要なため、「仕組みの重要性」が非常に高いポジションだと言えます。

② 情報が「膨大かつ複雑」
カスタマーサクセスが扱うデータや情報量は、時間軸が長く、情報は蓄積され続け、情報量は営業やマーケティングの数倍に膨らんできます。
また取り扱うデータの種類も非常に多く、MRRや利用ログといった「定量」、サクセスプランやVoCといった「定性」、決裁者の本音や期待値といった「関係性・感情」の3層に分かれ、時間軸もツールも異なります。
しかも情報は蓄積され続け、顧客の変化で常に上書きされます。冒頭の顧客でも、定量は順調なのに、関係性と感情が先に動いていました。
CSは「定量・定性・感情」という3層の情報が複雑に関連し、常に変化する中で、
「いつ・何に・どの順番で」着手すべきかを見極める、高度な情報マネジメントが求められます。

③ 矛盾するKPI
相反するKPIの両立こそが、カスタマーサクセスの本質的な難しさです。
丁寧にやるほど1社にかける時間が増え、管理できる顧客数が減る。数を追うほど支援が薄くなり、LTVが下がる。
この質と生産性のジレンマの両立を「人」でやろうとすると、必ず破綻します。

3つの構造は、担当者が優秀なら解決する問題ではない
ここで一番お伝えしたいのは、3つの構造はどれも、担当者が優秀なら解決するという種類の問題ではないということです。
むしろ優秀な担当者ほど、構造の難しさを自分の頑張りで埋めようとして、多くの顧客を抱え込みがちです。その人がいるうちは回っていても、異動や退職で抜けた瞬間に、支援の質が一気に落ちる。成果がその人に属していて、チームに残らないからです。
構造の問題は、仕組みで解決する必要があります。
「人」と「リソース」に頼る2つの打ち手がCSの現場を疲弊させる
それでも現場では、この問題を「人」と「リソース」で解決しようとする打ち手が選ばれがちです。
私はその打ち手を基本的には推奨していません。
構造の問題は仕組みで解決すべきと考えているからです。
おすすめしない解決策① 優秀な人を採用する
CSチームを強化しようとすると、優秀な人の採用に目が向きます。しかも求められるのは、CS経験者よりも、営業やコンサルタント出身の人であることが少なくありません。
これは、CSという仕事が、いかにこれまで仕組み化された環境の中で行われてこなかったかを表しています。
仕組みがない現場では、成果はその人の能力で説明するしかありません。だからCSで成果を出してきた人の強みも、つくってきた仕組みではなく個人の能力として語られ、CSの経験そのものが評価されにくくなります。CSという職種が、キャリアとして十分に評価されにくい一因も、ここにあります。
この状況は私は、大きな問題だと考えています。
逆に、仕組みがあれば、どんな人でも一定の成果を出せるようになります。
仕組みは、採用のハードルも下げてくれるのです。
優秀な人を採用することを否定しているわけではありません。
優秀な人を採用することしか解決策を生み出せていない現状を問題視しているのです。
おすすめしない解決策②顧客との接触回数を増やす
もう1つは、単純にミーティングの回数を増やし、連絡の頻度を上げることです。セグメントを切らず、どの顧客に注力するかの判断軸が曖昧なまま、すべての顧客への接点を一律に増やしていく。
これは③矛盾するKPIの「質と生産性のジレンマ」を、担当者の時間で埋めようとする打ち手です。顧客が増えるほど現場は疲弊し、本当に深い支援が必要な顧客に時間を使えなくなっていきます。
2つに共通するのは、設計を強化するのではなく、人とリソースで解決しようとしていることです。
優秀な人を採り続け、人手を足し続けられるのは、採用にも人件費にも余裕がある、体力のある会社だけです。人とリソースに頼るかぎり、CSの難しさは、体力のある会社でしか解けない問題になってしまいます。
CSの役割を、成功を仕組みで創り出すプロジェクトマネジメントにアップデートする
顧客ライフサイクルマネジメント2.0では、CSの役割を「解約を防ぐ仕事」ではなく、顧客の成功を「仕組み」で創り出す、極めて高度なプロジェクトマネジメントと定義しています。
優秀な個人が顧客を守るCSから、仕組みで顧客を前に進めるCSへ。「守るCS」から、LTVを最大化するために「守りながら攻めるCS」へとアップデートするには、仕組みが欠かせません。

仕組みは、「マネジメント」と「実行」を一体で設計する
顧客ライフサイクルマネジメント2.0では、
成果の作り方を決める「マネジメントの仕組み」と、
成果を作るために「実行する仕組み」を、一体で設計します。
仕組み化した一例を挙げると、こんな順番になります。
① 契約規模や活用の伸びしろで顧客を分け、セグメントごとに関わる深さと接点の頻度を決める(セグメント設計)
② 商談やミーティングの記録、利用データから、顧客ごとのサクセスプランを自動で作成・更新する(サクセスプラン設計)
③ 顧客の成果(アウトカム)がどこまで進んでいるかを、指標と基準値で可視化する(ヘルススコア設計)
④ スコアの低下や顧客側の担当者の異動といったシグナルが出たら、誰が・いつまでに・何をするかを決めておく(シグナル検知設計)
どれも、担当者の頑張りでは代わりがきかず、事前に設計しておかないと動かないものです。
①セグメント設計ががあれば、接触回数を一律に増やす必要はなくなります。②サクセスプラン設計があれば、担当者が変わっても「この顧客は何を目指しているか」がぶれません。③ヘルススコア設計④シグナル検知設計があれば、変化が起きたその時点で、誰が担当しても同じ水準で手を打てます。そして、こうした仕組みをつくれること自体が、カスタマーサクセスの専門性として評価されるようになります。
マネジメントだけでは理想論で終わり、実行だけではツール導入で終わります。両者がそろってこそ、顧客と自社の成功が実現できます。最初から細かく設計する必要はありません。まずはセグメントごとに関わり方の基準を決めるところから始めれば十分です。

まとめ
カスタマーサクセスは、極めて高度なプロジェクトマネジメントです。優秀な人だけでは回りません。お金をかけても伸びない構造、膨大かつ複雑な情報、矛盾するKPIという3つの構造は、人とリソースではなく、設計で解決する問題です。
優秀な人に頼るのではなく、誰がやっても成果が出る仕組みをつくる。そんな体制を目指していきましょう!
「明日から使えるCS実践トレーニング」のDAY1では、自社の顧客に当てはめながら、CSの仕組みづくりの土台となる顧客ライフサイクルマネジメント2.0についてお伝えしています。
「明日から使えるCS実践トレーニング」とは?
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この記事を書いた人

「MagicSuccess」のグロース責任者として、セールスからカスタマーサクセスまでを一気通貫で担い、導入企業のカスタマーサクセス戦略の設計に伴走。その中で「自社に合ったカスタマーサクセス組織の型」をつくれずに悩む企業の多さを痛感し、実践型の育成プログラム「明日から使えるCS実践トレーニング(CS明日トレ)」を立ち上げる。主催・講師として、累計200名超が受講する人気講座に育てた。大規模なカスタマーサクセスのコミュニティイベントの企画・運営も手がける。
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